About

サカズキファームの歩み

山形県米沢市万世町、
ここにある一際 草がボーボーの畑、
それがサカズキファームの園地です。
無農薬、無科学肥料で作ったこの環境は
住んでいる生き物たちが主役の畑。
土の中の菌や微生物、虫や草花が
野菜の生きる力を助けてくれます。
僕らはその折り合いを助けるだけ。
だからうまい野菜ができるんです。

農家になる前のこと

仕事への向き合い方を教わった恩人

飲食店の調理スタッフとして社会人生活をスタートさせた僕は、人生の転換点を2度経験します。
1度目は職場の先輩が独立して、自分の店を立ち上げる時に、従業員として僕を誘ってくれたことです。
東京都台東区浅草に店を構える「盃屋かづち」。化学調味料を一切使わず、特別栽培や有機栽培の食材を使った体に優しい江戸料理や各地の郷土料理を提供するお店です。この店の厨房で板前として働かせてもらいました。
店主の山浦さんの食材への向き合い、味の研鑽に加えて、無駄なく食材を使い切るということに強い信念がありました。ゴミになる部分を極力減らして、隅々まで使って美味しいものを作ることが料理人としての腕なんだと、教えていただきました。

有機野菜との出会い

今思えば恥ずかしいことですが、僕はかづちで働く前までは、食材を仕事の道具としてしか見れていなかったかもしれません。お客様のお腹を満たすための材料。見え方が一気に変わったのは、かづちでのはじめての仕込みの時です。キュウリの切ろうと包丁の刃先を当てた時、指に伝わる感触に手を止めてしまいました。自分の知ってる野菜じゃない。すごく生きてる感じがする。これまで触れてきた野菜の色が白黒なら、初めて鮮やかに本当の色を見えた気がしました。作り方でこんなに違うのか。作業を再開しながら、鼓動が早くなるほど興奮したのを覚えています。

農家になると決意

故郷山形に戻る

今後も板前として長く東京で生きていくと思っていました。そんな時、山形に暮らす父が病で余命が短いと聞いて、残される母の生活を考えた時に、故郷で生きるという道を意識し始めます。もし戻るとして、仕事はどうしよう。これまでの仕事を活かせる職に就けるだろうか。かづちでの仕事に誇りを持っていた自分にとって、地元とはいえ、働く場としては初めての場所で、自分はなにができるだろうかと悩みました。

農家という選択

山形で生きることを考えた時に、思い浮かんだのは、米沢市で長く農業を続けている叔父の働く姿です。誰かにお願いされたわけではなく、田植えと稲刈りを毎年手伝っていました。子供のころからの遊びの延長でしたが、大人になっても続けていたのは、その作業や景色が好きだったからだと思います。そこで家族とのつながりを除いて、故郷と自分を繋いでいるのは農業だったことに気づきます。もし農家として自分が生きるなら、何が作りたいだろう。
「やるなら有機がいい」
結論が出てからはすぐ動きました。山浦さんに故郷に戻ることを伝えました。かづちで出会った有機野菜への感動が、今後の自分の生きる道を示してくれたことに感謝しました。
いつか自分が作った有機野菜をかづちで料理してもらって、お客様に振舞ってもらうこと、これが最初に掲げた目標です。自分の挑戦に山浦さんは背中を押してくれました。

ゼロから始める有機栽培

父を看取った翌年2019年に山形に戻った僕は農家としての生活を始めました。これが二つ目の転換点です。
「最初は慣行栽培から初めて、技術や知識を蓄えてから、有機に転換していけばいいんじゃないか?」
農家として生きることに賛成してくれた叔父のその言葉は、有機栽培で農業をはじめることのハードルの高さを物語っていたんだと思います。最初の1、2年は無我夢中で近隣の有機栽培農家に片っ端から電話して、直接農地にお邪魔しながら農法や使っている資材について聞いて回りながら、手探りで自分の作り方を研究していきました。試行錯誤の毎日の中で、家族に支えられ、同業の仲間に助けられ、自分以外の誰かに協力してもらうことの頼もしさを意識するようになりました。
屋号を考える時、農業を通して他者と協力しながら面白いもの産んでいく、その繋がりを宴席に見立てて、人と人を繋ぐ盃のような農家になれるよう「サカズキファーム」と名付けました。

サカズキファームの有機栽培

有機栽培の基準というのは国によって厳格に定められていて、有機JAS規格の認証を受けた農作物や食品に限り、「オーガニック」や「有機栽培」という言葉の使用が許されます。ただ有機JASの認証を受けた農家が、全て同じ農法で作物を作っているかというと、そうではありません。サカズキファームで実践している特徴を端的に挙げると、以下の4点です。

サカズキファームのこだわり

01

有機肥料を使う理由

僕が理想とする畑は生き物の営みが循環する畑です。植物や虫などが元気に活動して、最後に微生物のよって分解されて畑の肥やしになる。この肥やしだけで次の年も元気に作物が育てば良いのですが、土づくりを生き物だけに任せてしまうと、分解された栄養素の量も質も不安定になってしまい、連作障害やさまざまな病気を引き起こす原因になってしまします。作物やその他の生き物が芽吹き、活き活きと活動できるよう、有機肥料を使ってバランスのいい土づくりを行っています。

02

植物が植物を守り育てる

サカズキファームでは一般的な農薬はもちろんですが、有機栽培の使用認証を受けた有機農薬も使用していません。農薬の役割は大きく言えば防疫、防虫、殺虫、治療です。この役割の内、防疫と防虫については、農薬を使わなくても作物自身の免疫を高めることと、他の植物の力を借りてある程度対応が可能だとわかったからです。コンパニオンプランツ(共栄植物)、バンカープランツ(おとり植物)と呼ばれる植物と作物を共生共栄させることで、上に挙げた理想の畑に近づけています。

03

サカズキファームで
取りいれている植物と効果

コンパニオンプランツ(共栄植物)

マリーゴールド

マリーゴールドの根から分泌される虫除け成分が、病原虫の線虫を寄せ付けない効果があります。

枝豆

マメ科の植物は空気中から窒素を集めて、共生している根粒菌が窒素を植物が取り込みやすいに形に変えて土中に巻いてくれます。これにより、使う肥料を少なくすみ、作物自身が元気に育ちます。

長ネギ

根に共生する拮抗菌作る抗生物質が、土の中の病原菌を減らしてくれます。キュウリと根の深度が近いためキュウリによく発生するつる割れ病を防いでくれます。

バンカープランツ(おとり植物)

ソルゴー(大麦の仲間)

作物の身代わりに。モザイク病などの原因になるアブラムシを寄せるための植物です。天敵のテントウムシやカメムシの住処にもなります。また定期的に刈った葉はそのまま撒いておくと日光を遮断して雑草の発生を抑え、枯れた後は緑肥となり、土の栄養補給にもなります。

えん麦

縦に深く根を呼ばしていく植物のため、雨が少ない時期に地中深くから水を汲み上げて、土中を湿らせ深く根を張らない植物の吸水を助けます。また、深く根を下ろした際に土中にたくさんの隙間を作るため、水をよく通し、大雨の際に冠水を防ぐ効果もあります。

ひまわり

作物が風によって折れるのを防ぐ風除けと風に乗ってやってくる害虫を受け止めてくれます。また種を求めてやってくるスズメが、ナスの害虫でもあるコガネムシを食べてくれます。

04

土創緑育

まるっきり自然と同じではありませんが、自然に近づけて作物が本来持つ免疫力を高めて健康的な野菜を作ることができて、初めて安定的な収量と品質を確保することができるようになりました。
サカズキファームの農業への考え方として「土創緑育」という言葉を創りました。人が土をつくり芽吹きを助け、周りに植えた植物や土中の微生物や菌たちによって、作物を育ててもらう。こうしてできた野菜はあの日かづちで手にしたキュウリと同じように、生命力にあふれてとにかくうまいんです。
日々新しいことを試しながら、それぞれが役割を持った営みを循環させる畑にできてきていると感じています。

食品ロスと向き合う

新たな課題は「ロス」

有機栽培農家として作物を生み出すことはできる様になりました。その道程の中で課題になったのが、取れすぎた作物や、形の悪い作物の廃棄問題です。例えば唐辛子は、もともと薄皮丸茄子の浅漬けの辛味付けのために1袋に青唐辛子を1本入れるために作っていました。ただ材料として使用できる量の何倍もの量の唐辛子ができてしまいます。量が増え収穫が遅くなり、多くのものは赤く熟してしまいます。赤い唐辛子は酸味が出てきてしまい、こうなると茄子漬けに使うことはできません。泣く泣く廃棄しなければならない時もありました。

フードロスを減らしたい

食べられず廃棄しなければならない野菜を見ながら、かづちの山浦さんの姿勢を思い出します。食材を無駄なく、おいしく使い切る。どうにか廃棄になる野菜を減らしたい。そんな思いから生まれたのが、「サカズキファームのなんばん粉」などの加工品たちです。
うちで育てている唐辛子は一般的に一味唐辛子に使われている品種とは違う品種です。でも深い香りと奥行きのある辛みがありました。勇気をだして商品化して売り出してみると、たくさんの方に気に入っていただき、今では、県内外でお取り扱いいただけるようになりました。目標の一つでもあったかづちでも置いてもらっています。

加工品を通して
新たな出会いが生まれた

自分で育てた作物を違う形にしてお客様に届けたい。青果だけでなく加工品を作りたいと思う様になってから、無農薬で育てた野菜の個性を理解して、快く協力してくれる新たな仲間もどんどん増えていきました。誰かと協力して何かを作るのは本当に面白い。有機栽培農家として様々な形でお客様に、僕の作った野菜を楽しんでもらえることを心から嬉しく思っています。

自然と人

このホームページに来ていただけた方はおそらくサカズキファームをどこかで知っていただいて、たどり着いていただけたのだと思います。興味をもっていただき本当にありがとうございます。
ショップのページでは直接商品を購入いただけますので、ぜひ生き物たちと、加工のプロフェッショナルから磨いてもらったうちの野菜を味わってみてください。自信を持って喜んでいただけるものと思います。
食べていただけた方、興味を持っていただけた方の食卓が、楽しいものになることを祈っております。

サカズキファーム園主
遠藤泰樹